JKママさん始動

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 商業区はオシャレな街並みが広がっていて、真琴とフランチェスカはオシャレなスイーツバイキングを楽しんでいた。  慌てて挨拶に来たイーライ・カウフマンのサーブしたアイスの盛り合わせは、あっという間に二人の胃袋の中に消えた。 「美味しいですね。イーライさんのアイスは、代官山に負けない素晴らしいコーディネートでした」  最後のドリンクを飲みながら、真琴は言った。 「イーライは東京をずっと回っていたから、きっと嬉しいわよ。あこがれていたから」 「それはいいのですが。フランチェスカさん。凄く目立っていますね」  あー。うん。フランチェスカは呻いた。  バイキングは、ほとんど王妃の握手会と化していた。  多分、1000人くらいが並んでいた。 「マコトさんも、100人くらいいたわね」  アースワンに詳しい国民は、レアなモノクル巨乳人妻降臨だああああ!並べええ!という塩梅だった。 「国会議員ですから。しかし、降魔さんはカッコいいからいいとして、私と握手したい人間がいるとは思いませんでした」  それはどうだろうとは思う。 「お店間違えたかも知れないわね。ここなら大丈夫だと思っていたけど。うちの人なんか誰も気にしないのよ?あ、最近は凄くカッコいいのよ?まるで付き合っていた頃みたいに。スッキリしちゃってて。そう言えば、また連絡取れなくなっちゃって。きっとまた女の子絡みよ。全く」 「フランチェスカさんは、エルネストさんと仲がよろしいと思ってました。今日は感じませんでしたが、エルネストさんの霊気を強く感じていました。子作りはいかがでしょうか?」  慌てて周囲を見回し、声を潜めて言った。 「それは、うんまあ。私ね。4人で終わりと思ってないのよ。でも、31になってから、他の子達と何かが違うような気がして。ねえマコトさんも、そう言うの感じない?」  女性にとって、30を越えるかどうかは別次元の重みがあった。 「思えば、緑くんを産んで以来、私にも同じような葛藤がありました。私は愚かにも自分を責め、結局は恐ろしい娘を誕生させてしまいました。その娘に対しては、今では複雑な感情を抱いています。愛を求めるあの子は、しかし確かに可愛いのです。降魔さんも子供達もあの子を受け入れました。私は、ママとして精一杯あの子に応えてあげたい。一度自分を殺した相手を愛せるのか。今も自分に問いかけています」  思った以上にヘビーな回答が来ていた。 「子供産んじゃうと変わるわね、女は。何でこんなに違っちゃうのかしら。たまに考えるわ。うちの人に愛人がいなくて、私に子供がいなければ、どんな夫婦生活かな?とかね」 「そうですね。私達女は子を産む時、自分の遺伝情報のみならず、魂を分けるのです。霊分(たまわ)けによって産み出された分身である子供は、母親の魂を元に成長します。一方、母親の欠けた魂はいずれ復元しますが、魂のありかに自覚のある、フランチェスカさんのような強い霊力を持った方は、失われた魂の傷をずっと認識し続けます」 「痛みはないの。でも、欠ける前の心を覚えてはいるのよ。時々思い出しては、つい溜め息を吐いちゃうのよね。他の子達もきっと、30過ぎると思い出すんでしょうね」 「ならば、目立たず自由に振る舞えて、フレッシュな感覚を思い出す方法を一緒に考えてみるのはどうでしょう?」  そんな夢のような方法があれば。  あら?もしかしたら。 「あるかも知れない。ええ、きっと。そうよ!会いに行きましょう!あの子のいるところに!」  真琴は怪訝な顔をしていた。
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