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第四話
朝の7時、迎えたくもない朝、自然と目が覚める。いつも寝る前には明日が来ないことを願うが、明日が来ないことなんて地球滅亡以外ありえない。
月曜日の朝は他の日と比べて体がいっそう重くなる。これは僕だけでなく全国の学生が体感するだろう。
出たくないベットから起き上がり一階に降りる。机の上にはトースト、目玉焼き、ベーコン、少し冷めたコーヒーが置いてあった。両親はいつも6時頃に家を出るので朝はいつも僕一人だ。近くにあるリモコンを取りテレビをつける。朝から見慣れた報道陣が「おはようございます!」と大きな声で視聴者に挨拶する。これを見て、この人達どういう心情で言っているのだろう?。と思ってしまうことがある。悪い性格だ
朝食を食べ洗面所に行き、歯磨きと顔を洗う。これは毎朝のルーティーンだ。歯磨きをしながら今日の自分を映し出してる鏡を見る。相変わらずボサボサな髪の毛で、いたってどこにでもいそうな高校生だ。高校生になってから姿が180度変わり、最初は慣れなかったが、今ではこっちの方が自分に合ってると思っている。
丁寧に歯磨きと顔を洗ったあと自分の部屋に向かい制服に着替える。出るまでの間はスマホでアニメや好きな歌手のライブ情報を調べる。
いつもの出る時間になり、僕は近くに置いてあった鞄を背負い、誰もいない家に「行ってきます」とだけ言い家を出る。
もう五月の中旬に差し掛かるというのに衣替えまで後二週間もある。学校に着く頃には歩いていても汗だくになっている。この気持ち悪さは今でも慣れない。
これを思う度に『もう少しで夏服に変わるから我慢だ』と自分に言い聞かせている。
靴を履き替え、教室に着き自分の席に座る。
「おはよう」とクラスメイトに声をかけられる。
「おはよう」と僕も言い返す。
一応、クラスの学級委員長をやっているのでそれなりと皆からは認知されている。
机に荷物を置いたとき先生が教室に来た。
「おーい、九は来てるか?」
と大声でクラスにいる皆に聞く。
「あ、来てますけど」と僕はゆっくり手を上げて言う。
「おお!ちょうど良かった。ちょっと来てくれ」
とベテランの女教師(担任)に一階の文化教室(体育祭や学園祭などの道具を置いている教室)に連れていかれた。
ここの高校は学園祭が6月の終わりにある。そのため、一足先に生徒会、クラスの委員長、副委員長、文化実行委員はこの時期になると沢山の仕事で忙しくなる。
「で、ここの荷物をこの台車に載せてうちのクラスに持ってきておいてくれ。エレベーターは使って良いからさ」
「別にこれくらい先生一人でも出来るでしょ」
「いや、こういうのはお前らにやらせないとな。若いときから経験を積むことが大事だぞ。あ、今私いいこと言ったかも」
「全然言えてませんよ。てか副委員長の狭間もいるときにやらないと僕が不公平じゃないんですか?」
「いやーあの子いつもギリギリに学校に来るだろう?だからいつも早く来る君に任せようと思ったんだ。それより、君たち幼馴染みなんだって?一緒に来たら良いじゃないか?」
「その情報どこから手に入れたんですか?」
「風の噂と言うやつかな」
「まあ幼馴染みですけどね。でも、家が遠いんで一緒には来ませんよ」
「何だそうなのか。まあどちらにせよその荷物お願いねー」
と手を振りながら先生は部屋を出ていった。
「はぁ~」と溜め息をつきながら荷物を台車に載せる。一通りの荷物を載せエレベーターを使って自分の教室まで持っていった。
先生からは「ありがとう!」とだけ言われ自分の席に座る。すると、後ろから「お、はよう!」と肩を思いっきり叩かれた。
「痛っ~えな。やめろよ夏鈴」
「お!よく分かりました」
狭間 夏鈴
僕の幼馴染み。昔から元気がよく、僕にちょっかいをかけてくる。小学生の頃はよく遊んでいたが、今は向こうから嫌と言うほど遊びに行こうと言われショッピングセンターなどに連れていかれる。ぼくがこんな見た目になっても変らず誘ってくる。正直うんざりしているが憎めないとこもある。
「お前もうちょっと早く来いよ」
「私、朝弱くてねー。あ、何かあったの?」
「まあ、特に無いけど、何となく」と嘘をついた。
「そういえば、次の文化祭の集まりっていつだっけ?」
「多分、明後日だと思うけど」
「ありがとう!後、反省を活かして、明日から早めに来ます!」
「そうしてくれると、助かるよ」
そして、憂鬱な授業が始まった。嫌いな先生の話。催眠術かのように眠たくなる声。『こんなこと勉強して何の役にたつのだろうか?』と生徒が必ずと思うことが頭に浮かんだ。その後も文化祭の手伝いをさせられ、帰ったのは6時過ぎった。
「ただいま」
「あら、お帰り。遅かったね」
「まあ、文化祭の準備があってね」
「もう文化祭の時期なのね、楽しみだわ。明日なんだけど少し帰ってくるの遅くなるわ」
「何かあるの?」
「明日は私の親友の命日なの、だから───」
「分かった。ご飯は自分で作るね」
「あら、助かるわ」、満面の笑みで言う母。
「ちょっと、勉強してくる」とその場を逃げるように僕は二階へ上がった。
今日の授業の復習をする。と言ってもするのは好きな教科だけだが。そんなこんなで30分経つころに急な睡魔が襲ってきた。ゆっくりと目蓋がくっつきそうになっては目を開けまたくっつきそうになっては開けての繰り返しだった。こんなことを続けていても意味がないと思い10分程仮眠をとるために机に突っ伏した。
*
気付けば僕は夢の中にいた。ベビーベットの中にいる。体が小さく身動きが取れない。
「わぁー!これが赤ちゃん?」と大きな声で20代くらいの若い女性がベビーベットの中の僕を覗き込んでいる。
その女性はお母さんではなく、どこかで見た女性だった。でも、誰なのか思い出せない。
「そういえば、まだ私の名前を教えてなかったね。────です!と言っても、未来の君は私のこと知ってるから教えなくて良かったかも。まあ、いいか!最後に渡のお願いちゃんと守ってね」
彼女の名前ノイズがかかっているようで、聞こえなかった。そして、最後のお願いも何なのか分からない。
ある考えが頭をよぎった。
もしかして、彼女は未来の───
「ちょっと、未来、ご飯できたから起きて」と母は僕の体を揺さぶり起こす。現実に戻された。
頭がすこしかんがえこボーッとするが夢の記憶ははっきりと残っていた。途端口から
「ねぇ、僕が生まれた時に20代くらいの女性が家に来なかった?」
と、僕は母に唐突に質問してしまった。あの夢が気になったのだろう。
「ごめんなさい、思い出せないわ。あなたが生まれたときは沢山の人が家にきたから思い出すのは無理ね。それより、ごはんができたから早く一階に来てね」
母はゆっくりぼくの部屋から出ていった。一人残された僕は不思議な感覚と少しの恐怖を感じていた。
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