66人が本棚に入れています
本棚に追加
最終話 変化デス
私も母さんと、家の事だけでいっぱいいっぱいです。
「ねえ母さんここは?」
「こっちからこうかけて、これをはずして」
編み物、はまってます、おばあちゃんからは、マフラーぐらいは習っていたけど、細かいものは今やっとって感じです。
足を折ったときは何ともなかったのに、今はちょっとなんだかおかしいのはわかってます。カミーラは腰をやったんだと言っていますが、若さで乗り切れると思わないで、重いものは持たないように、温泉でしっかりあったまるように言われました。
それと、たぶんだけど。
向こうの世界ではできなかったことが今身体の中で起きている、それを実感しています。
私もお母さんになるんです。
【チャーム誰か来るわ。】
外に出ました。
女性が一人山を登ってきます、誰だろう?
んーと背伸びをしながら隣に並んだ人。
【ああ、ありゃ、アルべのこれだ】
これ?
ああ、あの人が彼女。
へー、やるな。
へーなんて、呼びに行ってこよ。
俺が行ってくるといっちゃった。
畑にいる兄ちゃんが転げまわるように急いできます。
笑っちゃう。
へー、なかなかお似合いじゃん。
ここにいてくれる人ならいいけどなー。
また家族が増えます。
ここに立っているだけで胸が熱くなります。
視線が変わり、見る風景が変わっても、山も木々も変わりません。
ハイジの世界、私の子供ができたら聞かせてあげよう、いろんな物語を。
「ヤッホー!」
隣にいる人が驚いています。
兄たちがびっくりして振り返りました。
ごめんなさい。
「俺も」
「じゃあ一緒にする?」
せーのっ!
「ヤッホー!」
やまびこ、帰ってきませんよ。かえすのはグルーナたちの声です。
私の過去の時間はそろそろネタ切れです。
何かの時は思い出すのでしょうが、そろそろ首にかけていた手帳を置く時が来たようです。
幼い時から首にかけていたメモ帳。
今じゃ立派なものになりました。
私、あと何年生きるかわからないけど、ここで灰になるのでしょう、そうなりたいと今は思います。
その時まで精いっぱい生きるとしますか。
「チャームお茶」
ハイハイ、ティータイムにしましょう。
家の中に入ると額縁がいくつも飾ってあります。
何位もなかった十六年前、この話をしたら母さんはびっくりするかもしれない。
家の中に物があるってすごいなと思う。
「どうした?」
肩を抱かれ見上げた先にはイケメン一号、父さん。
「笑顔っていいね」
「そうだな」
そこには兄の書いたみんなの笑顔がいっぱいです、もう顔なしの私はここにはいません。
笑い声が外にまで漏れ出す家族、私の家はここにあります。
END
最初のコメントを投稿しよう!