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待ち合わせは、いつも決まっています。
かつての学舎であり、私と彼女が出会った場でもある、ここS大学。
「お! 櫻木、時間キッチリだな」
この大学に残って、ショウジョウバエの遺伝子研究を続けている同期の冴島が、大学中央棟のフロアで手を挙げていました。
「時間は有限ですからね。1秒たりとも無駄には出来ません」
冴島の前まで歩いて行くと、実験室の鍵を仰々しい笑顔と一緒に渡してきます。
残念ながら、私はあなたの笑顔に1ミクロンも興味はありません。
「黒沢さん、もう来てるよ。ほんと美人だよなあ。付き合ってる人とかっているのかな?」
「チッ」
どうやらこいつもハエのようですね。
「え……今、櫻木舌打ちした?」
「いえ。先ほど食べたざる蕎麦が、歯に挟まっていたようです」
「蕎麦なんて挟まるか? まあ、立ち話もなんだし、実験室までお供するよ。今日は彼女の仕事の手伝いなんだろ? なんなら俺も」
「いえ結構。場所もわかりますので、案内は不要です」
私と花さんのデートは、何人たりとも邪魔することは許しません。
「はいはい、相変わらず冷たいなあ。いつもそんなだと、結婚できないぞ?」
「心配には及びません」
「え⁉︎ まさか、ついに櫻木にも結婚相手が?」
かつてアインシュタインは言いました。
Gravitation can not be held responsible for people falling in love.
人が恋に落ちるのは、万有引力のせいではない。
そうです。恋に落ちるのは───
「お話はまたの機会に。私の運命の人が待っていますから」
運命なのです。
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