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最近姉の花の様子がおかしい。
頻繁に電話がかかってきたり、誕生日でもないのに、前から欲しかったスニーカー送ってきてくれたりとか。
特に仲が悪いわけじゃないけど、今までお互いあまり干渉してこなかったせいで、これまでと違う花の様子は、少し心配だったりする。
何かあったんじゃないかって……
「あ、また電話」
バイトからの帰り道、ポケットに入れたスマホが震える。夜道に光る液晶画面には、花の名前が表示されていた。
「もしもし? 花、どうしたの?」
『葉……今どこ?』
元気の無い声。
やっぱり、何かあったんだろうか。
「今バイトの帰りだけど、何かあった?」
『ちょっと葉に頼みたいことがあったんだけど……大した用事じゃないし……やめようかな』
「え……何? 気になるだろ」
『ううん、やっぱ迷惑かけたくないし、やめておくわ』
大体のことはそつなく一人でこなしてしまう花が、こんなに深刻そうに頼んでくるなんて。きっとよほどのことだ。
「俺が出来ることなら、遠慮せずに頼めよ。弟だろ」
『じゃあ……葉がそこまで言ってくれるなら、お願いしちゃおっかな♪ うふふ』
あれ?
なんか、テンションが急に高くなった気が……
『葉に買ってきて欲しい本があるのよ』
「本?」
『そう。今大通りを歩いてるでしょ? 目の前のコンビニを曲がってすぐの小さな本屋に向かって頂戴』
「え?」
なんで俺が大通りにいるの知ってるんだろう? さっき言ったっけ?
「何で俺が大通りに」
『ほらほら。喋ってないで歩きなさい。そこにしか売って無い本があるんだから』
やっぱり様子がおかしい……
「何てタイトルの本?」
『着いたら教えるから。ほら、そこのコンビニを曲がって!』
言われて顔を上げると、確かに目の前には見慣れたコンビニ。だけど、どうにもおかしい。
まるで見張られてるみたいだ。何で俺の居場所が分かってるみたいな物言いなんだ?
念のため周囲を確認してみても、特に花らしき人物は見当たらない。
帰宅中のサラリーマンと、猫を散歩させてるやたらと背の高いお姉さんくらい。
不審な様子は何もないけど、一応周囲を警戒しつつ、俺は花の指示通りにコンビニを曲がった先にある小さな本屋へと足を進めた。
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