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モーレツ社員として脇目もふらず働いてきた俺は、浮いた噂がなかった。
責任ある仕事を任され始めた頃から、山の仲間や同窓生に、交際や結婚したとSNSにアップする者が多くなった。
時間を作って合コンに参加したが、不馴れな俺は、男女の会話の速さについていけなかった。
ちびちび未だに強くない酒を味わっていると、目の前の女性も俺と同じオーラを出しているのに気がついた。
気の効いた話をしたいけど、出来ないから追笑か酒を飲む…
良く見ると、普通の女子。
飛び抜けて造作が良い訳でも、際立ってお洒落な訳でもない、極フツウの顔立ち。
俺の視線に気付いたのか、こちらを見る。
彼女は少し顔を赤らめて
「えっと、田中さんでしたよね?」
「はい。榎本…瑠奈さんでしたっけ?」
「はい」
お互い自己紹介をやり直して、2人同時に苦笑する。
「何か慣れてなくってスミマセン」
と俺が言うと、
「私も気の効いた話出来なくてスミマセン」
と返す。
さっき俺が思ってた事と同じ事を考えてた彼女に共感する。
ゆっくりとポツポツ話す彼女に好感が持て、連絡先を交換した。
その後、彼女の人柄と同じスローな感じのメールのやり取りがあり、デートに至った。
多忙でなかなか休みが取れない俺としては、彼女のテンポは有り難かった。
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