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彼女との付き合いは、全てがスローで進行した。
手を繋ぐのも
ハグするのも
キスをするのも。
俺だって人並みに性欲はある。
でも彼女と付き合う前だって、一人で処理していた。
エロい動画見たり、
妄想したり…その相手が、あの女なのは忌々しいが、今だに経験したのは彼女だけなのだから、致し方ない。
だから瑠奈とセックスするのが、少しばかり遅くったって構わない。
人と話す機会が滅多にない、活字だけを追っかけてる職場なのよ、と静かに笑う彼女は饒舌ではない。そんな処も好ましい。
ただ…何となく、
そう、ホント失礼な話、
瑠奈とのセックスを期待しない自分もいた。
何故なら、普通になるだろうから。
普通って何だ!?
ってツッコまれたら、経験の少ない俺はしどろもどろだけど、けっしてミキとした様なセックスではない事は確かだ。
あんな妖婦の、男のプライドを1mmも尊重しないセックス。
気が狂う位欲しい餌を目の前にぶら下げて、相手の尊厳を踏み潰しながら快楽に落とし込むセックス。
あれをもう一度シタいかと問われたら、
80%の確率で断固断る。
でも残り20%がグレーだ。
我を忘れる様な(前戯で自尊心を剥ぎ取られるから)
脳天を突き抜ける様な(彼女の腰使いがヤバイから)
そんなセックスを瑠奈と出来るとは思えない…
そして結局俺は2年半をかけて、恋人だった瑠奈を傷付けた。
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