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移転騒動が終わり、通常業務で回り始めた頃、結城明と出会った。きっかけは異業種交流会。 「(あきら)と書いてメイと読みます。建設現場の監督をしてます」 初対面同士の中で、グループトークを仕切っている、勝ち気な印象の女性。 話してみると、同い年。 何かと話題が被る。 お互い現場に一番近いとこで責務を果たしてる。直ぐに打ち解けた。 職人さん達と飲み比べしても負けないという酒豪が、 「彼氏、欲しい~」 とクダを巻き始めたのを、俺はノンアルを飲みながら拝聴した。 「俺と付き合えば?」 「酒弱い男と?」 胡乱な目で明は俺を眺める。 「駄目?」 俺は拗ねた顔をした。 「…可愛くないよ、私。ガテン系だし…」 明は、可愛いいというより格好いい系。 ショートヘアにメリハリがきいたボディライン。 それらを、いつもはヘルメットと作業着で隠してる彼女が体を許す、特別な相手になりたいと思った。 明から素面の時に返事を貰う前に、俺の海外出張が入った。 中南米の意外と高い標高差に、部外者だった俺に白羽の矢が当たった。曰く山男だったから高山病にかからないだろうと。 行けども行けども同じ景色の広大な大地。 かと思えば、極彩色に溢れる動植物の営みに圧倒され、頭のネジが一本ぶっ飛んで帰国した。 そしてデートらしいデートをしない内に、明と体を繋げる機会を強引に作った。 いい加減そろそろ認めるべきなのだ、自分の性癖を。 日々武骨な男達を指揮する明なら、俺の密かな願いを叶えてくれるだろうと、惹かれたのだから。
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