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硝子のテーブルの冷たさに目が覚める。
「あ、起きた?」
俺は突っ伏して爆睡してた。顔を上げ周りを見渡すとミキ以外誰もいない。
「?…みんなは?」
スマホを弄りながら、煙草の煙を吐き出し
「もう、とっくに帰ったわよ」
「起こしてくれても良いのに…」
痛む頭を押さえながら、目の前の水を飲む。
「何言ってんの、起こしたわよ。アンタ全然起きないんだもん。ふん!山男のクセに酒が弱いのね」
「仕方ないだろ、体質なんだから」
身だしなみを整え、立ち上がる。
「やべっ…会計は?」
「10万」
「えっ!あいつら~」
裏返った俺の声に、ミキはスマホの画面から俺に顔を向けた。
「あははっ~嘘よ。頂いたわ」
余程俺が素っ頓狂な面をしてたのだろう。彼女は目尻に涙をためて爆笑してる。
居心地が悪くなり、何か挨拶して出ていこうと思い
「…ご馳走様でした」
と小声で帰ろうとすると、鞄を持つ手首を捕まれた。
「ねえ。アンタの為に私、戸締まり頼まれたんだよね~」
「すみません」
彼女は凄い握力で俺を捕んだまま、もう片方の手の爪に目線を落として
「私の時間返して欲しいな~デートもキャンセルになったし」
照明を落とした中でも、彼女の化粧の濃さがハッキリ分かる。
同じように真っ赤な爪。
「ご免なさい!」
罪人みたいに彼女に繋がれたまま、俺は頭を深く下げた。
垂れた頭の天辺に視線を感じる。
「ねえ、アンタ、セックスしない?」
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