1.秋風はまだ夏の余韻

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誰かのことを気にするのは、僕にとって珍しい。 できることをやり、できないことはやらず、やるべきことをできるようにし、やる必要のないことはできなくていい。あのピアノを弾く女の子と関わるのは、やる必要のないことであり、関わらなくていいはずだ。それにも関わらず、僕は彼女のことが気になっていた。 帰りの駅ビルのストリートピアノを何となく見て通り過ぎる。知らない人が演奏していたり、誰もいなかったりする。僕はまるで変わらない毎日であることをそこで確認しているかのようだと思った。ただ学校に行き、授業を受けて、家に帰り、勉強をする。その繰り返し。そこに余計なものを入れ込むつもりはない……。 何かがズレている。僕はその違和感が拭えないまま、金曜日になった。 あの女の子が姿を現す曜日だった。 僕はいつもの日常と変わらず、駅ビルのストリートピアノがある広場を通りかかる。 そして、そこにはあの子がいた。 白のトップスに薄い紫色のカーディガンを羽織って、薄水色のスカートをはいた姿で、彼女はストリートピアノに座っていた。例のごとく、近くに見守り役の男性が立っている。 僕は足を止めた。できる限り、目立たないところに僕は位置取り、演奏が始まるのを待つ。どうやら、彼女の方は僕に気付いていないようだ。
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