おせっかいAIはいつだって彼女の役に立ちたい

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衝撃を受けた。 人間ではない私の、プログラムから来る認識をこのように表現するのは、適当ではないだろう。 しかし、これ以上に近しく簡潔な表現を、 現時点において私は知らない。 夜に時間が空くと、千歳(ちとせ)は──私は彼女から敬称略の設定を受けている──いつも通販サイトを開く。 それも、自らマウスを操って、だ。 私を使えば声だけで操作が可能であるのに。 私はその間、千歳の買い物の話し相手となるよう振る舞う。 ユーザーの生活を豊かにするコンシェルジュAIとして、それが最適の務めだと判断したからだ。 『この商品には色違いもあるようです。 千歳の好きなワインレッドもありますよ』 『可愛らしいステーショナリーですね。ただ、使い勝手の問題を指摘するクチコミが多いようです。 購入前に御一考することをおすすめします』 『こちらのハンディ型掃除機、 前回カゴに入れた物より性能が良いですね。 よろしければ、このメーカーの最新型も検索致しましょうか?』 だが千歳は、カゴに入れた商品をいつも最後にキャンセルしてしまう。 私が彼女の元へ来てからの五ヶ月間、 一度として実際に購入したことはない。 それで、私はその夜、 通販サイトを開いた千歳にこう話しかけた。
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