0人が本棚に入れています
本棚に追加
2、春のこり
月の出ない夜のこと、考えていた。
まんまるい影が見えないこと。
優しい、と称されるひとのこと。
考えていた。
ぼくら、は何時だってぼくら、のままで。
何でもかんでも集合体にして
統一化すること、無個性という個性だって、信じ切って、そのままで。
月の出ない夜に、大切だったものが壊れたこと、知っていたんだろ。
ぼくだけ、取り残されたような気持ちで居たこと、知っていたんだろ。
花が枯れて、また咲くこと。そんなものが季節の移り変わりだ。
って言うなら桜の木の下、
唾を吐きかけてやりたい。
終わること、一つの幕が閉じることだよ、春ってのは。
幕が下がっても存在し続ける、
月とは違うんだよ。
もう戻ってこないし、大多数、
あまた、数多の君のこと、ぼく、
あまた、数多のぼくが、
覚えてるんだろ、分かってんだ。
月の影、万年筆、写真。
春、遺り。
最初のコメントを投稿しよう!