2、春のこり

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2、春のこり

月の出ない夜のこと、考えていた。 まんまるい影が見えないこと。 優しい、と(しょう)されるひとのこと。 考えていた。 ぼくら、は何時(いつ)だってぼくら、のままで。 何でもかんでも集合体にして 統一化すること、無個性という個性だって、信じ切って、そのままで。 月の出ない夜に、大切だったものが壊れたこと、知っていたんだろ。 ぼくだけ、取り残されたような気持ちで居たこと、知っていたんだろ。 花が枯れて、また咲くこと。そんなものが季節の移り変わりだ。 って言うなら桜の木の下、 唾を吐きかけてやりたい。 終わること、一つの幕が閉じることだよ、春ってのは。 幕が下がっても存在し続ける、 (きみ)とは違うんだよ。 もう戻ってこないし、大多数、 あまた、数多の君のこと、ぼく、 あまた、数多のぼくが、 覚えてるんだろ、分かってんだ。 月の影、万年筆、写真。 春、(のこ)り。
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