0人が本棚に入れています
本棚に追加
2、輝夜姫
月が。丸く深い円が光を反射する。
する、と、目を開けていられなくなって
君に一つの嘘、ついた、夜。
夜、月が輝いていた、よく覚えてる。
覚えてる、一つの嘘、君は気づかない。
気づかない、ずっと笑っていなくちゃ。
笑っていなくちゃ、笑い飛ばして、
君の事、全部忘れたい。
忘れたい、月の光が
君に降り注いできたら、
ぼくは、もっともっと、楽に。
楽に、月へ近づいていく君、
見守っていられるのに。
なのに、こんなところで
なにをしているの、
さっさと月へ帰って。
帰って、だって君の居場所は、其処。
其処、ぼくの近くに居座らないで、
ぼくはお月見をするだけで、たまに。
たまに、月を、眺めるだけで。
眺めるだけで、「良かった。」なんて。
なんて、なんと馬鹿げた、君風に言ってしまえば、仮面をもう一つ、
重ねたのと、おんなじ。
同じ、事気づかずに、
そのまま月へ帰って。
帰って、いく君に
貢物なんてぼくはしない。
しないから、貰った不老不死の薬も
どこぞの山頂で焼いてしまう。
仕舞う、煙に流れて仕舞う、雨。
雨、など要らない。
要らないよ、要らなかった、
ぼくはただ、
月に、嫌われることの無きように、
それでいい。
それでいい、だけ、届かない手のひらを、
いつの夜も。
いつの世も、そっと、伸ばすだけ。
「輝夜姫」
最初のコメントを投稿しよう!