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 とにかく、逃げなければ。  アタシたちは怖そうな人間たちに捕まらないように全速力で走った。 「あ、逃げやがった!」 「野良なんか、放っておけよ。それより、こっちの猫、死んでるぞ。役所に来てもらって処分してもらわないと。厄介だなあ、このクソ猫め!」 「ありゃ? 誰か餌付けしてた奴がいるな。ペットボトルや皿がそのままになってる。とんでもねえ!」  男たちの罵声が聞こえた。  あの人間たち、おかあちゃんをどうするつもりだろう。でも、アタシたちはあそこへはもう戻れないことぐらいは分かった。  ずっとおかあちゃんのそばにいたかったのに・・・  ひどいや、ひどいよ。  ただ当てもなく、ひたすら走った。  小屋の下がいちばん安全だと思っていた棲み処はもうないのだ。いちばん楽しかった場所には、もう棲めないのだ。  悲しくて、辛くて、寂しくて。  だけど、新しい寝床を見つけなければ。  走り続けたので、疲れてきた。  アタシと弟は草むらの陰に身を潜めて、しばらくじっしていることにした。  耳をピンと立て、ひげの感覚を最大限にして、草の隙間から遠くの様子を窺った。あいつらは追ってこなかったので、少しほっとした。  そこは南中学校の近くだった。  アタシたちにごはんやお水をくれた生徒たちが通っている学校だ。草むらの向こうに道路があって、道路を挟んで校門が見える。  ちょうど校門からゾロゾロと生徒たちが出てくるところだった。  猫の嗅覚と記憶はいいのだ。(嗅覚は犬には負けるけどね、それでもかなりのもんさ)  しもぶくれの子と眼鏡の子とお団子ヘアの子はいるだろうか。 (仲良くしてくれた女の子たち、まだいるかな)  弟が首を伸ばして遠くを観察しはじめた。 (ここで待っておいで。アタシが様子を見てくるからね)  アタシは道路際まで忍び寄った。もちろん草むらの陰に隠れながらだ。    くん、くん、くん・・・  風にのって、あの子たちの匂いが漂っている。  
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