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だだっ広い空き地にポツンと建っている物置小屋の土台の下が、アタシたちの棲み処。雨風はしのげるし、人間も滅多に来ないから棲むにはいいところだ。
でも、アタシたちはもう何日も食べていなかった。
口にしたのは近くの田んぼのお水だけ。ザリガニやカエルを探したけど、白鷺たちが大勢でやってきてみんな食べられてしまったみたいで、一匹も見つからなかった。
ひもじい。
おかあちゃんは寝そべったまま、長いシッポの先をパタリパタリと面倒くさげに動かしている。弟がそのシッポにじゃれついて遊んでいたけど、すぐにあきてしまったのか、アタシにすり寄ってきた。
(姉ちゃん、腹減ったよう)
(アタシだって。あんただけじゃないんだから、我慢しなよ)
アタシはいらいらしていた。
寝そべっていたおかあちゃんの耳がピンと立った。眼をあけると、気持ちよさそうに伸びをして、大きなあくびをした。
(どおれ、じゃあご飯探しに行こうかねえ)
ふらふらと立ち上がった。
おかあちゃんは、最近、ぐあいが悪いらしくて動きが鈍い。それでも、まだ幼い弟にお乳をあげるためにもぞもぞ体を動かしているけど、出はよくないのだ。弟の歯は丈夫になりつつあるから、そろそろ自力で動いてもらわなくては困るのだが、甘えん坊なのでいつもべったりひっついている。
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