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「川島動物病院がいいらしいよ。ほら、東山梨園とコンビニの交差点の所のあるでしょ」  眼鏡の子が、チューブ入りのご飯をぐったりしているおかあちゃんに食べさせようとしながら言った。おかあちゃんは小さく口を開けただけだった。  食欲もないんだ。ねえ、おかあちゃんを助けて。  アタシはすがるように鳴いた。 「でも、誰が連れていくの? ゲージが必要だし、おカネがうんとかかるよ。うちの近所に犬を飼ってる家があってさ、川島病院へ連れて行ったら二万円くらいしたんだって」  しもぶくれの子が、ペットはゲージに入るのを嫌がるとか、その家にはクルマがなくてタクシーを呼んだらしいとか、そんな話をしている。 「家猫はそれで助かるけど、これは野良だからなあ・・・放っておいたら死んじゃうよ!」  お団子の子が強い口調で言った。 「だったら、言い出しっぺのミホが病院に連れて行けばいいじゃん。そうだ、お小遣いみんなで出し合えば、二万円くらいになるかな」  しもぶくれの子が提案している。 「うーん、一人あたり七千円弱かあ。きついなあ・・・親に頼んでも、なんでそんな野良にかまってるんだ?って怒られるから、絶対ムリッ!」  お団子の子は、結局、尻込みしている。  彼女たちは黙りこんでしまった。  しばらくすると、眼鏡の子がぽつりと言った。 「ゴメン、わたし、これから塾があるんだよ」 「そっか。塾か。ニャンコたちのことは、きょうは保留にしよう」  しもぶくれの子がまた提案した。  お団子の子は反対しなかったけど、アタシの頭を撫ぜた。 「ごめんね。ごはんとお水をここに置いていくから、これで勘弁してね」  お団子の子は紙袋から丸くて小さな器と四角いお皿を取り出して、アタシの前に並べた。  丸い器にペットボトルの水が注がれ、四角いお皿にはカリカリを山積みにしてくれた。 「お水がなくなったらペットボトルから補充するのよ・・・。カリカリはこの袋の中だからね。っていうか、わたしが何言ってるかわからないよね」  アタシは前脚を出して、ペットボトルの太い部分をひっくり返してみせた。  どぼどぼと水がこぼれる。 「うそお!? まじい!?」  驚くことじゃないのだ。  猫は学習能力が高いの!    彼女たちは喜んで笑ってくれたけど・・・  せっかく仲良くなった人間のおともだちは、その日を最後に来なくなってしまった。理由はわからない。  
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