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「もっちー、もし手が空いてたらこれ投函してきてくれる?」 「あっ、はい!」 先輩から茶封筒を受け取ってロビーまでエレベーターで降りた 私が働いている企画部はみんなフレンドリーだ あだ名で呼ばれている ちなみに私の名前は望月芹 それであだ名はもっちー そこら辺にいる普通の24歳のOL 見た目も普通、特技も何もない 自慢出来ることもない あっ、自分のことじゃないけれど自慢出来ることがあるとすれば従兄弟がイケメンすぎること 従兄弟の礼央くんは20歳で父親になって今では二児の父親である 興味ない人には本当に冷たい礼央くん 私も親戚じゃなかったらきっと話も聞いてもらえていないと思う ショップの店員だった礼央くんは有名だったらしく、礼央くん目当てで来ているお客さんが多かったらしい 今はそのショップの本社で会社員をしているってお母さんから前に聞いた 何故私には礼央くんに流れている美形の血が少しでも分けてもらえなかったんだろう 従兄弟なのに似てるところが全くない お母さんにそれを言ったら耳の形が似ているって返って来た そんな残念な私だけれど職場には恵まれていて充実した日々を送っている わがままを言えばこれに恋愛もプラスされたらもっと良いんだけど 今のところ可能性はゼロに近い 「芹さんだっ」 爽やかな少年が近付いて来た この会社で私のことを唯一名前で呼ぶ人 会社の中にあるコンビニでバイトしてる大学生の槙野泰生くん 人懐っこい人柄で私を見かけたら必ず声かけてくれる 「泰生くんお疲れ様」 「芹さんの好きな限定イチゴアイス、取ってあるんで帰り寄ってって下さいね」 「......ありがとう!」 泰生くんは笑顔を向けてまたコンビニの方に戻って行った ....普通に話せたかな? 少し離れたところで足を止めた 振り返ってレジで泰生くんが笑顔で接客をしているのを見つめた 私は少し前から彼に叶わない恋をしている 気持ちを伝えるつもりもない これ以上距離を縮めるつもりもない ただ泰生くんが大学を卒業してここから去っていく日を待つだけ
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