おくちあーん

1/1
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ

おくちあーん

 よく晴れた日のこと、修道院にある葡萄畑で収穫をしていたら、ふと一緒に収穫の仕事をしているはずの修道士見習いふたりがなにやらこそこそしているのを見つけた。  どうしたのだろう。そう思ってふたりに近寄り、どうしたのかと声を掛けた。するとふたりは、口を閉じたままなにも言わずに首を振る。  これはもしや。そう思って、ふたりに口を開けてごらん。と続けて言うと、また口を閉じたまま首を振る。それならばと、私が口を大きく開けてみせると、片方がつられて口を開けた。その中には葡萄の実が一粒入っていた。  慌ててそれを隠す彼を見て微笑ましくなり、今回はみんなに内緒にしておくと約束する。  でも、こんな隠しごとはもうしちゃだめだよ。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!