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駅前と言っていたので、露店を出すとしたら、この広くなっている場所しかないが、それらしきものは見当たらない。
駅の周りを歩き、北口に廻ったが、結果は同じ。こっちの方が人通りが少ないし、店を出せるような場所はない。
私はもう一度、南口に戻り、改札から出てくる人を、手当たり次第つかまえて聞いてみた。迷惑そうに無言で走り去る人もいれば、丁寧に答えてくれる人もいたが、知っているという人はいない。もう諦めかけた時、思わず、名前を呼ばれた。
「アキさん、こんばんは」
シンイチだった。
「シンイチくん、こんばんは。ママは?もしかして、ひとりなの?」
「僕は、英会話の帰りで ひとりだよ。ママは暗い時季には迎えに来てくれるけど」
「そうなんだね。偉いね」
「アキさん、ここで何してるの?」
「うん、ちょっとね。人探し。ここで手相占いしてた、お婆さんを探してるの」
「それ、僕知ってるよ。ママだから」
えっ?!私は耳を疑った。いや、薄々わかっていたことだが、認めたくはなかったのだ。
「シンイチくんがそのことを知ってるって、ママは知ってるの?」
「知らないよ。でも、僕がママの誕生日に買ってあげた100均のストラップをスマホに付けてるのが見えたから、ママで間違いないよ。ほら、ママって変装得意でしょ?」
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