蜜月

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普段は大きなワンコみたいな可愛い年下のイケメンモデルは、一度スイッチが入ると獰猛な“雄”の顔をして言う事を聞かなくなる。普段はどんな我儘言ってもにこにこ聞いてくれるのに、ベッドの中で「いや、だめ、待って」全部聞いてくれた試しがなかった。 それでも宝物に触れるみたいに優しく肌を辿っていく指だとか、切ない掠れ声で私の名前を呼ぶ瞬間とか、ほんとはもっと早く動きたいはずなのに馴染むまで我慢してくれる所とか。全部好きだから。由樹に求められて断れるはずなんてないの。由樹はいつも『俺の方が好きが大きいし、重いよ』なんて言うけれど。きっともう私の方がずっと由樹に溺れてる。一瞬も離して欲しくないって思うくらいに、素肌をぴったりくっつけて。動けないよって困ったように笑う由樹とずっと繋がっていたい。 「泉、今度事務所通して結婚報告のFAX、関係各所に流そうと思うんだけど」 額に滲んだ汗を頬に垂らしながら、あっけらかんと由樹は言った。 ちょっと気が飛んでいた私は慌てて身体を起こして彼に抱きつく。急いで私の背に腕を回して支えてくれる由樹に、甘えて体重を預けた。 「大丈夫なの? 事務所は反対するんじゃ…」 「駄目って言ったら今入ってる大口の海外での仕事もやーらないって言ったら、あっさりOKしたよ?」 無邪気な顔でそう言った由樹は、もう一度私の事を押し倒すと。 「それでさ…泉は、俺との赤ちゃん欲しくない?」 「…何、唐突だね」 子どもが生まれたらこの部屋丁度良い広さになるかも…なんて考えが読まれていたのかと焦る私に、由樹は甘い顔をして囁いた。 「この間の現場、赤ちゃんもいてさ。すっごく可愛かったんだけど、俺と泉の子だったらきっともっと可愛いよなぁ~って思って」 胸に唇を寄せ、由樹自身が赤ちゃんみたいに音を立てて吸い始めた。 絶対、赤ちゃんはこんなやらしい吸い方しないから…! 「ね、泉はどう? 赤ちゃん欲しくない?」 意地悪くゆるゆると甘い刺激を続けながら首を傾げる由樹に、もうどうにでもなれと叫んだ。 「欲しいっ…由樹の赤ちゃん私も欲しいから…!!」 切なくなって出た言葉に、私はヤバいと思ったけど…今日はちゃんとゴムを付けてた事を思い出して、ホッと息を吐いた。由樹は可笑しそうに笑う。 「泉の言質取れて良かった~。俺、泉に怒られるの嫌だからさ」 そう言って急に激しく腰を動かし始めた彼に、私は意味が分からないままもう何も考えられなくなって。吐息のような喘ぎ声しか出せなくなっていった。
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