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ぼくが住んでいるのは、海の底。暗い冷たい海の底。
仲間はいない。一人ぼっちで住んでいる。
ときどき、深海魚がやってくる。すこし話す。でも深海魚は、人見知りで無口だから、すぐに行ってしまう。
平気だよ。ぼくは、海の中ならどこへでも行けるから。
ウミガメの背中に乗って、遠くまででかけたり、イルカといっしょにジャンプしたり、大きな大きなイワシの群れにつっこんだり。
毎日だれかと遊んでいるんだ。
楽しいよ。
だから、海の底へ帰るのは淋しい。また一人ぼっちになるから。
でも、ぼくは海の底でしか眠れないから、帰るしかない。
ずっとむかし、海の上で、魚たちと遊んでいたとき、大きな大きな船が通りかかった。四本の煙突から、もくもくと煙をはき出している。
はじめて見たから、とてもびっくりした。めずらしくて、船が起こす波に巻き込まれないように気をつけながら、しばらくついていった。
ふと上を見上げたら、デッキから見下ろしている女の子と目があった。
「人間の子ども。」
金色のふわふわの髪。青い目。なんてかわいいんだろう。
「いっしょに海の底で暮らしてくれないかな。」
そう思った。
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