セイレーン Anotherside

1/5
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
 ぼくが住んでいるのは、海の底。暗い冷たい海の底。  仲間はいない。一人ぼっちで住んでいる。  ときどき、深海魚がやってくる。すこし話す。でも深海魚は、人見知りで無口だから、すぐに行ってしまう。  平気だよ。ぼくは、海の中ならどこへでも行けるから。  ウミガメの背中に乗って、遠くまででかけたり、イルカといっしょにジャンプしたり、大きな大きなイワシの群れにつっこんだり。  毎日だれかと遊んでいるんだ。  楽しいよ。  だから、海の底へ帰るのは淋しい。また一人ぼっちになるから。  でも、ぼくは海の底でしか眠れないから、帰るしかない。  ずっとむかし、海の上で、魚たちと遊んでいたとき、大きな大きな船が通りかかった。四本の煙突から、もくもくと煙をはき出している。  はじめて見たから、とてもびっくりした。めずらしくて、船が起こす波に巻き込まれないように気をつけながら、しばらくついていった。  ふと上を見上げたら、デッキから見下ろしている女の子と目があった。 「人間の子ども。」  金色のふわふわの髪。青い目。なんてかわいいんだろう。 「いっしょに海の底で暮らしてくれないかな。」  そう思った。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!