セイレーン Anotherside

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 ぼくは、シュルっとデッキに移動した。水脈や配管をつたって、移動できるんだ。女の子は、目の前にいる。手を差しのべて、ぼくにできる、最大級の笑顔で 「いっしょに行こう。」  と誘った。  女の子はぽかんとした顔のまま、ぼくの手をとった。ぼくは女の子をつれて、シュルっと海へ移動した。そのまま、海の底へもぐっていく。  ちゃんと息ができるように、大きな空気の泡で包んで。  これで、一人ぼっちじゃない。いつでも女の子といっしょだ。もう淋しくない。  そう思ったのに、女の子は、ずっと泣いている。帰りたいと泣いている。  ぼくは、女の子が泣きやむように、いろんな所へ連れていった。  サンゴ礁の海で、熱帯魚をおいかけた。  北極の海で、アザラシといっしょに魚をとった。  噴火している海底火山も見せた。  でも、女の子は泣きやむことはなく、とうとう息を止め、冷たく硬くなってしまった。  ぼくは泣きながら、泡を割った。 「さようなら。」  ぼくは、女の子の亡骸をバリボリと食べた。  また一人ぼっちになってしまった。
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