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 そのとき、私の腰に回されたのは毛むくじゃらの手。  私のことを引き寄せてギュッと抱きしめたのはオオカミくん。そのまま爪のついた大きな手で私の頭を「よしよし」と撫でる。  えっ? ど、ど、どうゆうこと⁈  もちろん本物のオオカミじゃなくて着ぐるみなんだけど、さらには知ってる人なんだけど、中の彼の行動にかなり、かなり動揺した私。  呆気に取られてた2人組が、ちょっと不穏な表情になる。 「何だよ?」 「遊ばねぇよ! あっちいけ!」  今まで無言だったオオカミがドスの効いた声で喋ったのでギョッとした彼らは「しらける」とか言い捨てて去っていった。 「あ、ありがとう」  お礼を言ってる私の顔、真っ赤になってる。あと1日で11月だけど、人ごみとか、オオカミくんのふかふかの毛皮のせいで暑いとか言うんじゃない、たぶん。 「ご、ごめん。勝手に」  腰に回してた毛むくじゃらの腕が離れて、スッと涼しくなる。  びっくりした……でも、ナンパから助けてくれたんだよね? 「休憩しようぜ。……こんな人ごみで声張り上げたって誰もまともに聞きやしないよ」 「え? でも」 「いいから」  オオカミくんに手を引かれ、私は店と店の間の路地に入った。  壁にもたれたら、思わずため息が出た。やっぱり、なんだかんだ疲れてたみたい。
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