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二人とも面食らった顔をしてたので、俺の顔が真っ赤になってるのは間違いなかった。
逃げるように厨房に下り、流しで洗い物をしていると、横に有さんが立った。
「……矢上くん、松本さんと何かあった?」
「は? は、は、は……なん、何にも」
思いっきり何でもないわけない返事をしてしまったが、有さんの表情はあいかわらず読めなかった。この人のことは未だによくわからない。この店の事務仕事のほとんどを彼女がやってるみたいだし、表も裏も知り尽くしてる感じ。けどプライベートなことを話してるのを聞いたことがないので、彼女がいくつ位なのかも、どこら辺に住んでるかとかも全く知らなかった。
「……余計なお世話かもしれないけど、もし彼女に何か言いたいことがあるなら早くした方がいいかも」
「え?」
「今月中で辞めるんですって。次の人が決まり次第、来なくなっちゃうよ」
帰ろうとしている里帆を気づけば呼び止めていた。
もしかしたら夢に中てられただけなのかもしれないけど、彼女が辞めると聞いて身体が勝手に動いたのはたしかだった。
何のつながりも無くなってしまうのは嫌だった。
簡単な言葉すら出てこなくて驚く。
ものすごく緊張した。告白する側に立って、初めてわかった。
しどろもどろでかなり情けなかったけど、素直に告ったら、彼女もOKしてくれた。
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