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有さんは店内全体を管理する人で、どちらかというと販売がメインのこの店の、販売と有さんのサポートが私の仕事だった。幸い常連だったからか、ケーキの名前はほとんど覚えていた。味も食べたことがあるから、お客さんに勧められる。後から聞くと、有さんはその点を弦巻さんに推してくれたらしい。
驚いたのは、矢上くんが弦巻さんの甥っ子だということだった。
私と同い年で17歳。高校は店から二駅先にある中高一貫の男子校。たしかあそこ偏差値高いんだよね。頭もいいんだ。
だけど残念ながら、バイト中なのもあるけど、矢上くんと喋る機会はそんなになかった。
普段の彼はカフェコーナーの給仕や、厨房の片づけが仕事なので、あまり店内にいることがない。でも入っている時間帯はたいてい合ってて、だいたい夜8時前に終わると、お店を出るのが一緒になることはよくあった。
ただ、身悶えするほど残念なことに、私は町中へ、彼は電車に乗って帰るという全く正反対の方向だったから、「さよなら、お疲れ様」の挨拶くらいしかできなくて。
でも、それでも話せた日は嬉しかった。
そしてハロウィンの今日。
お店に行くと突然、弦巻さんに「これ着てチラシ配りしてきてね」って言われた。しかもオオカミの着ぐるみを着た矢上くんと一緒に。
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