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「肉球ついてるんだ……爪もちゃんとある」
「変なとこでリアル追求してるよな」
爽やかに笑いかけられて、ぽーっとしてしまう私。
「あと2時間くらいか」
矢上くんがオオカミの着ている半ズボンのポケットからスマホを取り出して時刻を見た。
今は6時を少し過ぎたくらい? さすがに休憩も終わりにしなきゃダメだよね。
私はこのままお話していたかったけど。
聞きたいことがいっぱいある。
好きな人とか、彼女とかいるのかなって。
でもそれ聞いたら、さすがにアピールだと思われちゃうよね。
「じゃあ、残りは俺が配るよ」
「え?」
「松本さんはもう声張らなくていいよ。枯れてきちゃったみたいだし」
あ……気づいてくれたんだ。嬉しいな。
「ただ、オオカミの頭被ったまんまだと、声通らないんだよね」
「あの、思ったんだけど……頭被らないで配ったら?」
「えっ? どういう意味?」
「その、うちのお店の場合、女の子にチラシ見て来てもらうべきじゃない?」
「それはわかるけど……なんで俺が顔出しで?」
自分がモテるという自覚がないんだろうか。カフェコーナーが繁盛してるのもこの人のおかげなのに。
「まあまあ。被ってると暑いでしょ? 深く考えないで」
「そう……だね。正直もう被りたくない」
その後の2時間は私の予測通り。
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