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 矢上くんが顔を出して配り始めたとたん、女性が次々と手に取ってくれて、チラシはあっという間に捌けた。8時過ぎに終わると、渋谷はいよいよ混み合ってきた。  弦巻さんが迎えに来てくれた車の後部座席に二人並んで座っていると、ウトウトしちゃってたのか、つい頭を矢上くんの肩に乗せてしまった。あわてて飛び退く私。 「ご、ごめんね」 「あ、ああ。気にしないで」  心なしか、矢上くんも赤くなってる気がした。  それから少し気まずい感じで何も喋れなかった。  家に帰ると、なぜか怖い顔をしたお母さん。バイトで遅くなること言ったと思うんだけど。  夕ご飯を食べてる私にクドクド言ってきたお説教から、お母さんの怒ってるわけがわかった。  今日の学校の面談で先生に私の中間考査の成績が悪かったと言われたみたい。それをバイトのせいだって言いたいらしい。  ようは一刻も早くバイトをやめなさいということだった。  期限は来月末まで。急に辞めるのはお母さんも先方に迷惑がかかると思うらしく、目処がつき次第、辞めるようにだって。  部屋でお店からお土産にもらったパンプキンプディングを食べてたら、涙が溢れてきた。  辞めたくないよ。  矢上くんに会えなくなるの、辛い。  辞める前にダメもとで告白してみようかな。  そうして半分泣きながら……私は眠っちゃった……みたい。
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