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side 里帆
「パティスリー・エメ・ボーヴォワールで〜す。ただ今、ハロウィンフェア、やってま〜す!」
「来店くださったお客様には、もれなくパンプキンプディング1個プレゼントしてま〜す!」
人ごみの中、舌を噛みそうな店名とともに声を張り上げ、宣伝する。
仮装した人たちでごった返すハロウィンの渋谷。
その中で私はチラシ配りのバイトをしていた。
学校が終わって午後4時くらいから、かれこれ2時間。初めはかわいい声を心がけていたけど、今はもう半ばヤケクソになってる。声が枯れてきちゃったからだ。
「わあ、赤ずきんちゃんだ〜。カッワイイ〜♡」
握られかけた手にすかさず店のチラシを押し付けた。
私の赤ずきんのコスプレがいけないのか、チラシを受け取って欲しい女の子より、ケーキなんてたぶん食べにこない男の子たちに声をかけられることが多かった。
「ねぇねぇ。バイト終わるのって何時? あとで俺たちと遊ぼうよ」
「無理です。終わったらまっすぐ帰ります」
「あはは、マジレス。これから仮装盛り上がってくるよ。楽しいよ」
「仕事中なので」
だいたいチラシで突き返せば今までのナンパは退散してくれたんだけど、このチャラそうな2人組しつこい……どうしよう。
「いいじゃん。今日くらいハメ外そうよ」
片方の男の手が伸びてきて、私の腕をつかもうとしてきた。
「え?」
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