泡 沫

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 きっと、叶わないものだから。  深い深い海の底に、そっと沈めてしまいましょうか。  私の大好きな王子様には。  それはそれはお似合いのお姫様がおります。  駆け寄るお姫様に王子様は手を伸ばす。  クシャクシャとお姫様の頭を撫でる優しい手。  お互いを愛しむように見つめ合って笑いあう。  二人の姿が眩しくて、眩しすぎて。  そっと目を伏せた。  その手が。  その瞳が、私だけのものならば……。  私は人魚。  思いを声に出来ない憐れな人魚。  海の上の王子様に恋をして。  誰にもそれを話せぬままで。  きっといつか泡と消えてしまうの。
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