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ほんの少しのイジワルは
試着室のカーテンをわずかに開けて、顔だけを出しているミズホ。
彼女の小さな頬は少しだけ赤らんでいる。
「どしたぁ?」
「……マキのいじわる」
小さな深呼吸ののち、意を決したようにカーテンを全開にした。
「どうかな?」
上は黒のタンクトップに、やや濃いめのベージュなブラウスを合わせて。
ただ、そこにふわりとしたロングスカートを組み合わせるのは、ちょっと意外だった。
いつものミズホを知っている人が見れば、普段とはかなり違った印象を受けそうな気がする。
なにより、あたしがそう思っているのだから間違いない。
それにしても想像していたよりもかなり思い切ったのね、なんて思っていたら、みるみるうちにミズホの顔がハイビスカスのように赤くなってきた。
どうにかして隠そうと思っているのだろうけれど、そのショートヘアじゃ何も隠せない。
「黙ることなくない?」
「かわいい、かわいい」
「……なんか投げやりじゃない?」
「だって、私に見せるためじゃないでしょー? 本当の目的としては」
「別に……、私はあんなヤツ」
素直じゃないことを言って、さらに赤くなる。
耳まで真っ赤だ。
「んー? 別にあたし、誰とは一言も言ってないけどー?」
そう言って煽ってあげると、勢いよく無言でカーテンが閉められた。
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