「結婚式は突然に」

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「結婚式は突然に」

 ああ、胸が苦しい……。私は大きく深呼吸した。  だけど心はうらはらに、白い羽が生えて、ふわふわと部屋中を飛んで行きそう!   私は真っ白なウェディングドレスに身を包んだ、鏡の中の自分を見つめた。スカートは腰からふんわりと広がって、床に流れている。胸元と背中には透ける生地にレースが施され、まるで肌に模様が浮かび上がっているように見える。上品だけどとても可愛らしい。  馬子にも衣装だね、とひとり悦に入っていると、ふと、ウェディングドレスを選んだ日の事を思い出した。  「可愛すぎるかな?」と、試着室のカーテンを開けて聞いたら、ブライダル衣装担当の方が、すかさず手を叩いて()めてくれた。  「とってもお似合いですよぉ。 お嬢様は小柄でいらっしゃるから、可愛らしいドレスがピッタリです!」  いつもならお世辞半分、と割り引いて聞くセールストークだけど、大きな鏡に映る姿は、自分で見ても、いつもよりも可愛いみたい。  一緒にドレスを選びに来てくれた彼は、いつだって過剰なほど褒めてくれるのに、何も言ってくれない。どうしたのかな? と思ったら……、口を五センチ開けて固まっていた。  衣装スタッフの方のくすくす、という笑い声で、ハッとすると、真っ赤になってやっと「キレイだよ、ふみちゃん」って言ってくれた。
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