のらねこ

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ある日、友人と歩いていたんです。 その時、犬派か猫派か、犬のほうがかわいい、いや猫が、みたいな会話をしていました。 ちなみに、私は猫派です。 するとタイムリーなことに、止まっている車の下らへんに猫が佇んでいました。 猫の話を丁度していたので、なんとなく二人で近づいていきました。 野良猫って、近づいてもすぐ逃げられちゃうんですけど、その子はこちらを見つめて、その場でニャーニャーって鳴き始めたんです。 その鳴き方がなんだか悲しそうで。 もっと近づいていくと、その子の右耳が酷く傷ついていました。 その鳴き方と酷く傷ついたその耳が、あまりにも可哀想で。 なにかできないものかと、とても悩んでしまいました。 でも、猫にあげれるものなど持っていなかったし、中途半端にあげてもその子のためにはならないと教えられてきました。 私はまだ自分の足で立っていないので、勝手に決められないですし、うちで飼ってあげることはできません。 それならせめて、撫でてあげたいと、少しでも温かさに触れさせてあげたいと思ったんです。 私は家で猫を2匹飼っていまして。 うちの猫たちになにか変な菌が感染ってしまうかもしれないので野良猫には触るなよと散々言われてきました。 なので、触ることもできないのです。 屈むと近づいてきて擦り寄ってくるんです。 でも触ってしまうのを防ぐために少し逃げてしまったんです。 本当に申し訳ない気持ちになってしまって。 とても葛藤しました。 片手だけなら大丈夫なんじゃないか、でもな…。 そして、撫でてあげることにしました。 左手で撫でるだけにしようと。 すると気持ち良さそうに目を細めるんです。 可愛い、もっと撫でてあげたい、うちで飼ってあげたい。 でも、あまり長くいればこの子にも良くない、どうせ飼わないのに撫で続けてもこの子が期待して損するだけだ。 そう思って、数十秒撫でるにとどめて、帰りました。 友人と別れて、帰っている途中、いろんなことを考えていました。 あんな耳だったのは他の動物にやられたんだろうか、とかあんなに人懐っこかったのはもともとは飼い猫だったからなのかな、とか…。 でも、やっぱり野良猫なので、これからも危険はきっと多くあるはずで。 だから、どうか長生きできるように、できるだけ長く幸せであるように、と強く願いました。
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