・野菜ジュースと炭酸飲料・

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・野菜ジュースと炭酸飲料・

 ゲームに飽きてコンビニに出かけたら、塾帰りの悟先輩と出会った。 「お疲れさまっす」 「おぉ、お疲れ。丸も塾の帰り?」 「いや、ゲームに飽きたんで、気分転換っす」 「そっか。俺はなんも食べないで塾行っちゃったから、腹減っちゃって」  そう言うと先輩は、紙パックの野菜ジュースとおにぎりが三つ入ったかごを持ち上げて見せた。  なにそれ。健康的かよ。 部活から帰って、夕飯待てずにカップ麺食って。あとはポテチと炭酸でひたすらゲームやってた俺とはえらい違いじゃねぇかよ。  たったそれだけのことなのに、なんだかまたもやもやしてきて…… 「じゃあ、俺の分も」 と冗談で近くの棚にあったコロッケパンを、悟先輩が持っているかごに入れた。 先輩は苦笑いしながらも、いいよ、とそのままレジに向かおうとした。 「いや、冗談っすよ?」  慌ててパンを取り出そうとすると、 「いいよ、パンくらい」 とその手を止めた上に、飲み物はいいの?なんて聞いてきた。  悟先輩は、そういう人。 他の先輩みたいな威圧感がまったくなくて、気軽に冗談も言えちまう。  1、2年の中にはそんな悟先輩を小馬鹿にしてるやつらもいるけど、それすら笑って許せる器のデカい人。  もちろんバスケではぜってぇ負けねぇ自信があるけど、だからって先輩を見下したことは一度もない。 だからこそ、千波先輩が好きなのが悟先輩なら……、って心のどっかで譲ってやる気持ちもあったけど……
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