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・先輩とセンパイ・
「あれ、昇? そっか。もう中学生か」
仮入部してきた昇と下校中、いきなり目の前に回り込んできた女子が、昇の顔を覗き込むようにして言った。
びっくりして声も出ないのか、昇は黙ったままこくりと頷いた。
ずい分小さいから新入生かと思ったけど、名札の色を見たら3年生だった。
先輩だとは信じられなくてもう一度顔に目をやると、なぜかその人もこっちを見てた。
それからなにかに気づいたみたいに、あっ!と大きな声を上げると、嬉しそうにもう一度昇に視線を戻した。
「バスケ部に入ったの?」
「えっ、うん。よくわかったね」
昇が答えると、その人はもう一度俺のほうを見た。
そして人差し指の先を俺のほうに向けると、
「バスケ部の子だよね? 悟といるとこよく見かけるし」
と得意げに笑った。
前にも話したことあったっけ?と思うほど、馴れ馴れしい話し方。
どう返していいのかわからなくて、無表情のまま小さく首を縦に振った。
その人はやっぱり~、と嬉しそうに笑うと、
「じゃあ部活頑張ってねっ」
と大きく手を振って、走り去っていった。
「……あの人知り合い?」
別に興味はなかったけど、特に話すこともないから聞いてみた。
「えっと……、親同士が知り合いで、何回か遊んだことがある感じで……」
「ふーん」
朝クシで梳かしただけっぽい、癖の強いショートヘア。
まだ四月だってのに、すでに薄ら日焼けもして……
「なんか……、男みたいだな」
そんな感想しか、出てこなかった。
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