・先輩とセンパイ・

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 次の日も昇と歩いていると、先輩がまた声をかけてきた。 「どうしたの? 筋肉痛?」  くすくす笑いながら、昇の脇腹を突っついてる。 「ちょっ、痛いからやめてよ」  顔を歪めた昇が、俺の後ろに回り込んだ。  俺を挟んでじゃれ合う様子を見ていると、やっぱり1年生同士にしか見えない。  動いてるからよくわかんないけど、身長は多分……145センチくらい? 142センチって言ってた昇と、ほとんど変わらない。 「センパ~イ、助けてくださいよぉ」  昇は情けない顔で見上げてるけど。 「まぁ、頑張れ」 と、二の腕を力一杯握ってやった。  悲鳴のような声を上げて昇がよろよろと逃げ出すと、その反応を見た先輩が、顔をくしゃくしゃにして面白がった。 その楽しそうな笑顔を見てたら、俺もつられて笑ってた。 「明日は外練だから、外周のランニングもあるぞ。そんなんで走れんの?」 「えっ、なんですか、それ」 「体育館だと場所がないからダッシュしかやんないけど、外練時は外周三周してから練習だからな」  泣き出しそうな顔で見つめる昇に、容赦なく言ってやった。 「そうそう。バスケ部のランニング、キツそうだよね。私よりよっぽと速いし」 「えっ、先輩何部?」  ついタメ口で聞き返してた。 「陸部だよっ」 「へー」 「一応長距離なんだけどね。走ってるとバスケ部にばんばん抜かれてく」  先輩は恥ずかしそうに、苦笑いした。  たしかに。まったく速そうに見えない。 「あっ、今ちょっと笑ったでしょう」  先輩は昇にちょっかい出すのをやめて、ほっぺたを膨らませて俺の顔を見上げた。 「えっ、いやぁ……」  返事に困って目を泳がせてると、冗談、と先輩は表情を緩めた。 「正直向いてないんだろうな、って思ってるよっ。でも私不器用だからさ、球技とか無理だし。一瞬で勝負がついちゃう短距離も、向いてないし。で、消去法で長距離」 「ふ~ん。でもただ走るだけって、しんどくない?」 「うん、めちゃくちゃしんどい。でも……、達成感みたいのはある」  “達成感”て言葉にちょっとだけ、先輩っぽさを感じた。 だけど。 俺たちがしゃべってる間にこっそりと10メートルくらい先まで逃げてた昇に気づくと、こら待て!と走り出した。  じゃれ合ってる姿はやっぱり、1年生同士にしか見えない。
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