・戸惑いと苛立ち・

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「……女とは思えないよな」  千波先輩の背中を目で追っていると、悟先輩が苦笑いを浮かべながらぼそっと呟いた。 その間の抜けた表情と無神経な言葉に、無性にムカついた。  本気で言ってる? あんなわかりやすくちょっかい出されてんのに、千波先輩の気持ち、マジでわかんねぇわけ? そんなんだから、補欠にすらなれねぇんだよ。って…… 思わず言っちまいそうなくらい、ムカムカする。 「そういえばあいつ、なんで丸のこと知ってるの?」 「えっ、あぁ……、昇ってやつ覚えてます?」 「あっ、一ヶ月くらいで辞めちゃった子かな?」 「はい。その昇がもともと知り合いだったらしくて、一緒に帰ってる時に話しかけられて……」 「へー……」  えっ、そんだけ? 千波先輩のこと気になってるから、聞いたんじゃねぇの? ただの顔見知りだってわかって、安心した?! 「……家の方向一緒なんで」 「えっ?」 「あ、千波先輩のことっす」 「あぁ……」 「帰り道で毎日会うんで、よく一緒に帰ってるんです」  あまりにもムカついたから、少し大袈裟に言ってしまった。 だけどそれを真に受けた悟先輩は、そうなんだ……、と顔を引きつらせた。 「あ、じゃあ、お疲れ」  悟先輩は唐突に言うと、校門を出ようとしてる千波先輩のほうに向かって走り出した。 そしてあっと言う間に追いつくと、わざと肩をぶつけながら横を通り過ぎた。  千波先輩がその背中を目で追いながらなんか言って。悟先輩が振り返ってなんか答えて。 千波先輩が笑いながら手を振って右に曲がって、悟先輩は左に曲がった。  なんなの? 俺のほうが仲良しだって、見せつけたかったとか?  一瞬もやっとしたけれど、すぐに考えるのをやめて、千波先輩を追いかけた。
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