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2 装☆着
洗面所へ寄る。
鏡の中で、青いワンピース姿の自分が機嫌良さそうにしている。このワンピースは社割で買った。
わたしはアパレルの売り子をしている。
ここ最近は、コロナによる出社日数の調整のために、ずっと家にいた。
外に出たい。家の中で、いくら新しい洋服を着ても、なにかが満たされない。足りないのはきっとイツキくんのスーツ姿に違いない。イツキくんがスーツを着れば全て解決する気がする。
髪を一つに括っていると、寝室の扉がひらいた。
「お待たせしました」
イツキくんがスーツ姿で現れた。
正確には、淡いストライプ柄のワイシャツに、落ち着いたネイビー色のスラックス、同色の上着を片手に持って出てきてくれた。
かっちりした黒い革ベルトが素敵だ。律儀に黒い靴下まで履いてくれている。
何だかとっても懐かしい姿だった。たのもしい。格好いい。素敵だ。
「ネクタイって締めます? 臙脂にドットか、紫とシルバーのストライプか、どっちがいいです?」
「紫とシルバーのストライプがいいです」
鏡を見つつ、イツキくんがネクタイを締めはじめた。真横で存分に堪能する。
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