2 装☆着

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「イツキくん、イツキくん、袖をまくってみてくれませんか」 「はいはい」 イツキくんが照れたように目を伏せて、ワイシャツの袖を、肘のところまでまくりあげてくれた。 くしゅっとめくれあがった袖と腕の感じがたまらない。 「イツキくん、イツキくん、ここまできたら靴も履いてみませんか?」 「あー……はいはい」 玄関へ移動する。 「どの靴にしますか?」 わたしは一瞬で靴を選択し、ぴっと指し示した。 選んだのは、濃い茶色の、先の尖り過ぎないポインテッドトゥの革靴だ。 靴先が丸みを帯びたプレーントゥもいい。ただ、靴先の尖り過ぎないポインテッドトゥの在能力は意外と凄いのだ。スーツや体形との組み合わせによっては、びっくりするくらい、男性の垢ぬけた姿を引き出してくれる。 イツキくんに靴ベラを渡す。イツキくんが革靴を履く。 もぞもぞした笑顔で尋ねられた。 「これでよろしいですか?」 わたしはとっても感極まった。 にこにこしながら、イツキくんの側に近寄っていく。イツキくんとは頭一つぶんくらい、身長差がある。 イツキくんを見上げて、ありがとう、と言おうとした瞬間だった。 あることに気がついた。気がついて、しまった。
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