自殺配信

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「こんばんはーっ!」 この場にそぐわない程のテンションと声量で画面に映ったのは、人気動画配信者、渡辺真斗だ。 眩しい程の笑顔と、やんちゃな見た目に反して明るく無邪気な性格が人気である。 渡辺は、普段の動画と変わらないテンションでニコニコと笑い画面に向かってヒラヒラと手を振った。その様子は普段の楽しい生配信かと勘違いしてしまいそうだ。 ここまで、福山亮、丸岡隆一、渡辺真斗と、若者からすればスター的存在である男たちが今から自殺をすると明言している。それだけでかなりの話題になるだろう。 しかし、あと3人も残っている。 人気者たちの自殺配信は、配信開始からわずか30分程度で既にネットニュースのトップに乗り閲覧数は100万人を越えようとしていた。 彼らにはそれだけの影響力がある。 「みなさーんっ!元気ですか?」 あまりにも場違いすぎるテンションの渡辺を、視聴者達は気にとめること無くコメント欄を低俗な言葉で埋めている。自殺を止める者、早くしろと急かす者たちが争いを繰り広げ、それはもう地獄絵図と化していた。 渡辺は自らがスルーされた事に首を傾げつつも、残りのメンバーに変わるため1度画面から外れる。 「次、奏多行きな。」 後ろで順番を待っていた奏多と呼ばれた男が立ち上がり、画面の前に現れた。 「こんばんは、大木奏多です。」 律儀にフルネームで自己紹介した彼はぺこりとこうべを垂れる。彼もまた人気動画配信者のひとりだ。 彼は渡辺と仲が良く、コラボ動画やプライベートでもよく遊んでおり、驚きよりも納得の声が多かった。 人間怖いものでここまで来ると、視聴者達も人気者が画面に現れることに徐々に慣れ始めてくる。 中にはあと2人が誰なのか予想をし始める不謹慎極まりない人たちもいた。 大木がもう一度ぺこりと頭を下げまだ画面外に戻る。残された2人の男が気だるげに画面前に現れた。
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