自殺配信

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「ども、」 怠そうに、それでいてどこか楽しそうな笑みをひっそり浮かべながら画面に現れたのは人気アイドル松山翔だ。 その横に居るのは人気動画配信者、佐藤健太。 彼は気だるげと言うよりはどことなく怯えたような表情をしているようにも見える。 佐藤のほんの少しの挙動に不信を覚えた視聴者達がここぞとばかりにコメントを打ち始めた。 「健太くん嫌そう。」「健太くん泣きそうになってる。」「健太くん今なら辞めれるよ」 そのコメントは勿論彼らの目にも入る。 佐藤があからさまに動揺した素振りを見せ画面外へと去る。 松山もひらひらと手を振り画面外へと戻った。 「僕たちの自己紹介、どうでした?」 再び福山が現れ視聴者に問いかける。 かなりの速さで流れるコメントを楽しそうに眺めながら福山は彼の後ろにいる5人へと視線を向ける。 その視線はなにも言わなくとも”本当にいいんだな?”と全員に問い掛けた。 丸岡が頷き、大木も頷く。松山も頷き、渡辺は笑顔で親指を立てた。 福山と4人の視線が佐藤へ向けられる。 実はこの計画当初佐藤を除いた5人の予定だった。 きっとしぬ勇気もない、ただただ恐怖心しかない。そんな佐藤にだけは生きていて欲しかった。 しかしその計画にあたって、自分たちの死後気を病まないよう佐藤に伝えたところ彼も着いていくと言ったのだった。 佐藤は5人とひとりずつ視線を交じり合わせる。 そして小さく頷いた。 福山は一瞬複雑そうな表情を見せたがすぐに妖しげな笑みを浮かべ画面の方へ視線を向ける。 深々と一礼をすると彼は語り始めた。
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