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(力があるだけじゃ、どうしようも出来無い事もあるんだよな……)
予知夢を見るには、突出した力よりも総合力の高さが必要で、礼人には経験と知識が足りなさ過ぎて、望んで予知夢を見る事は出来なかった。
礼人は目を瞑り、息を吐くと、
(もう眠ろう……)
予知夢を見ようとする努力よりも、明日の進軍に備えて体も精神も整えるのが一番だと判断し、わざとらしく、体にこれから眠るんだと教える為に二度三度溜息をつくように大きな呼吸を繰り返すと、籠の外から聞こえるみんなの笑い声が、段々遠くなっていくのであった。
________
遠退いた意識は脳の中にしまわれ、そのまま明日の朝の目覚めまで健やかに眠るはずだったのが、
(うっ…あぁ……)
(誰だ?)
誰かの呻き声が聞こえて来る。
どこから、どうやって礼人の意識に入り込んで来ているのか分からないが、
(おなか…すいたよ……)
(まだ、生きているのか?)
礼人の問いには答えずに、頭の中に一方的に声を飛ばしてくる。
(なんで…こんなひどいことしたの?)
(何をされたんだ?)
(ひどいよ…ひどいよ……)
(教えてくれ!!)
一方的に飛ばされるこの声が、きっと何かに繋がっているのだと確信し、向こうにいる何かに認識して貰えるように大きな声を張り上げると、
(…………)
向こうからの嘆きの声が止まった。
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