異世界の世界

116/133
前へ
/1028ページ
次へ
にわか雨のように降っていた嘆きの言葉の雨は、礼人の声で掻き消されて止んでしまい、そのまま雨雲は消えてしまうのかと思われたが、 (お腹…空いたよ……) (また、それか……) 嘆きのにわか雨が再び降り始めるのだが、同じ言葉を降らすだけで意味が無かった。 (……ダメか) 多分だが、この意識は助けて欲しくて意図的に飛ばしているのではなく、怨念に近い思念を礼人が偶然拾ってしまっているらしい。 これでは、どうしようも出来ないと半ば諦めかけたが、 (おいしそう……) (わけて…わけて……) (みんなでたべよ) (なんだ?) さっきとは違う言葉と、違う意思が礼人の中に入り込む。 これで、次に話が進めば良かったのだが、 (はやく…はやくぅ……) (あたま…あたま……あたまのおにくぐちゃぐちゃ) (おなかずるずる……) 礼人の声に誘われて来たのは、腹を空かした者達の思念であり、 (とんでもないな……) そこには、理性と言えるようなものは無い。 礼人のことをただのエサだと認識して、食べたい食べたいと嘆くばかり。 まるで、ゾンビ映画の腹を空かして食べる事しか考えていないゾンビのような思想であったが、 (ひどいとは、どういう意味ですか!!) 腹を空かしたゾンビとは違い、最初に(ひどい)と嘆いていた。
/1028ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加