異世界の世界

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どちらも甲乙付けがたい存在のはずなのだが、ビレーは目をつむり……代わりにリーフが、 「餓鬼状態に陥って理性を失ったリザードマンは異常なんです……本当に異常なんです……」 リザードマンとオーク……共に魔龍となり、魔獣となった時に確固たる隔たりが生まれる事を伝える。 「餓鬼状態になる事で、リザードマンは理性を失うか……」 理性を失うという事は、倫理観を失うという事。 リザードマン達も、好き好んで同じ言葉で会話をして、思想を交わせる事が出来る相手を食べようとしないのは、そこに感情が掛かり、相手を尊重したり、自分自身が野生の生き物では無いという倫理観。 そして、社会を形成するとなれば共食いという行いは論外で、文字通りの弱肉強食の世界では高度な社会を築く事等出来ない。 リザードマンは本来持つ凶暴な側面を、社会を形成する為に抑え込み、暴力的な強さを封印したのだろうが、生命に危機を与える程の飢餓になった場合は、生き延びる為に理性というストッパーが外れて、共食いすらも厭わない凶暴な魔龍になってしまうという事なのだ。 礼人はあの時、炎の中で必死に戦いを挑んで来たのが戦士では無く、もしも凶暴化したリザードマン達であったら自分は助かっていのかと思うと、震えから自分の腕を擦っていた。
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