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自分に出来る事と出来無い事の線引きを引き、出来ない事はしっかりと仲間に任せ、物事に流される時は、その流れの中で上手に泳いでみせる。
もちろん、それを行うにはそれ相応の信頼や姿勢という物が必要になるのだが、
「なんで…いつまでも未熟なんだ……」
今の礼人なら、アフレクションネクロマンサー様と認められている今なら、上手くすれば、じいちゃんとアニーのように立ち回れるものを、呪縛が解けきれない。
礼人は丸まった体をイモムシのように蠢かし、蝶にも蛹にもなれない自分を呪うが、
「アフレクションネクロマンサー様、朝食を持って来ました」
「リーフさん、今開けます」
自分の事を呪っている途中で、リーフが朝食を持って来てくれた。
礼人は自分が、無様に横たわっていたのを気付かれないように、立ち上がって籠のドアを開けると、朝食が乗ったお盆を器用に片手ずつに持っているリーフがいて、
「一緒に食事をしても?」
どうやら、自分と一緒に朝食を取る為に持って来てくれたらしい。
「えぇ、もちろんです」
わざわざ、自分を慕って来てくれたリーフを無碍(むげ)にする訳も無く、左手に持つ方の盆を受け取り、
「失礼します」
籠の中へと入ると、お互いが向き合うように座って、お盆を膝の上に乗せる。
礼人は、膝の上に乗せたお盆の上に置かれている朝食を見て、
「美味しそうですね」
食パンが三枚に、何かしらの果物のジャム、そして野菜がふんだんに使われているスープに、焼けて香ばしい匂いを漂わせるスライスされた厚い肉。
朝から重そうなメニューに思えるが、昨日からずっと行進して来た礼人達には、丁度良い量のメニューで、
「さっ、食べましょう」
リーフは食パンにジャムを塗って、そこにスライスされた厚い肉を乗せて頬張る。
最初はバラバラに食べようとしていた礼人も、美味しそうに食べるリーフをマネて、食パンにジャム、肉を乗せて頬張ると、果実の甘さに、塩だけを振られた肉の絶妙な味わいが口一杯に広がる。
甘味と塩味が反発し合う事無く混ざり合う味は素晴らしく、舌の上での優しい味わいが更に食欲を湧き立てる。
礼人は、その絶妙な味わいに喜びながら朝食を食べ、
「美味しいですか?」
「とても美味しいです」
その、様子にリーフも笑みを溢すのであった。
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