異世界の世界

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戦場にいながら、こんなにも美味しい食事を取れる事に感謝しつつ…… 「……リーフさん、これって?」 「お気付きになりましたか」 口に広がる美味を味わうのは良いのだが、味わいの中に穢れが一切無い。 街の中で出された食事の中ですら穢れが混ざり込んでいたのに、 「リーフさん、使ったのは霊力ですか?それとも……」 「使ったのは、マナと霊力を融合させた方の力です」 その言葉を聞いた瞬間、礼人はお盆をま横に置いて、 「目を確認します」 リーフの有無を聞く前に、彼女の頬に手を当てて霊視を行いながら、瞳の奥を確認する。 霊能者である礼人と、エルフであるリーフが必ずしも同じ症状が出るとは限らないが、それでも自分の左眼が結晶したのだから、真っ先に瞳を確認するのは妥当な話。 礼人は、リーフの瞳を覗き込むように、瞳の中の水晶体に異変が起きていないか注意深く見ていると、 「あの…そんなに、顔を寄せられると……」 リーフの吐息と自分の吐息が交わって、少しだけ濡れた息を互いに吸っていた。 「あっ…!?ごめんなさい!!」 礼人は、自分がしている事に気付いて、ハッと顔を上げて距離を取ると、そのまま椅子に座り直して、間が悪そうに顔を横に背ける。 (また…こういう事をして……) 悪気があってした事では無く、リーフの体に異変が起きていないか心配してのことなのだが、考え無しに動いた事を後悔する。 そんな、後悔から暗い顔をするアフレクションネクロマンサー様にリーフは、 「そんなに気になさらないで下さい。元々は、私がアフレクションネクロマンサー様に相談無しに、この力を使ってしまって、心配させたのがいけないんですから」 アフレクションネクロマンサー様を驚かせようとした事が、逆に迷惑を掛けたと、謝るのであった。 二人の間に、少し気まずい雰囲気が流れたものの、 「…失礼な事をしてすみません……けれど、その力をどのくらい使いましたか?」 先に口を開いたのは礼人の方であった。 自分がした事が、はしたない行為だというのは分かっているが、それでもリーフの事が心配なのだ。 この力は、将来的に死に直結する力。 けれど、リーフはまだ、この力には完全には目覚めていない。 自分みたいに出来損ないのアフレクションネクロマンサーではなく、リーフには完全なるアフレクションネクロマンサーとなって貰い、自分のような死に追い掛けられないでいて欲しいと心の底から思っている。
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