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敵の領地と化した森の中を進む彼等の表情には、さすがに緊張の面持ちが見える。
視認性の悪い森の中、ここでは少しの油断が命取りになるが、
「みなさん、私も出来るだけの事をします」
「「「はい!!」」」
全員の士気はかなり高い。
危険な一陣を任されているとはいえ、他の街にすら名を轟かせているビレーに、その息子であるベルガ、それにアフレクションネクロマンサー様が付いてくれている。
緊張の面持ちではあるが、決して縮こまらず、慎重に進んで行く。
(慌てるな)
礼人も、ビレーさんやベルガさんだけでなく、自分もみんなの精神的の支えになっている事を自覚し、みんなに囲まれて守られながらも、警戒用のシジミ蝶達をあちらこちらに飛ばす。
ここまで順風満帆で来れたのだ、ここでやられては、出鼻をくじかれることになる。
シジミ蝶達を、前の時のように木々の間に、葉の裏に隠して待機させる。
慎重に、けれど順調に進んで行く礼人達、
「アフレクションネクロマンサー様、もう少しで広場に着きます」
ただただ、道を進行して行くだけの行いであるが、緊張の紐は全員の首を真綿のように締め上げていたが、
「そこで、一段落出来ますね」
ここで少しだけ真綿の紐が緩む、ここまでの距離を進むより、緊張感で息苦しくしていたいたが、ようやくここで落ち着けるかと思うと……
(にく…い……)
進んで来た後方で、シジミ蝶に触れる気配を感じた。
「鉄騎兵か!!」
シジミ蝶に触れて流れて来た、憎しみの感情に鉄騎兵が、後ろの部隊に仕掛けようとしているのを感じ取り、鉄騎兵が触れた地点のシジミ蝶達を集めると、
『バチバチバチバチ!!!!』
一匹のアゲハ蝶にして、放電を始めさせる。
それは攻撃させる為では無く、放電する音によって、
「アフレクションネクロマンサー様!!」
「慌てないで!!鉄騎兵が後方の部隊を襲おうとしています!!私は……!!」
「そうじゃない!!身構えるんだ!!」
「えっ……」
礼人が後ろの部隊に気を取られた時、まるで合図を送り合ったかのように、
「キシャァァァァァァァァ!!!!!!」
大量のリザードマン達が、奇声を上げて走って向かって来る。
飢えた魔龍…その姿は、あの時の炎の中から飛び出して来たリザードマン達とは違い、口からよだれを垂らし、目を血走らせている。
そこには理性という物が無く、目の前の獲物を喰らいつき、肉を引き千切って空腹の腹に流し込み、そこから滴る血で乾いた喉を潤す事だけを望んで本能で突き進んで来る。
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