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こちらにも魔獣であるオークがいるというのに、
「がぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
雄叫びを上げるリザードマン達には、震えている子豚にしか見えていないらしい。
「重装隊前へ!!サンダウェーブを!!ベルガ分かってるな!!」
「任せろオヤジ!!」
ビレーは重たい鎧を着て、前に出ながらも指示を飛ばす。
「恐れるな!!」
重装隊は首を縮めて、頭を守る為にボクシング選手のように両腕を上げて、防御の態勢を取る。
ビレー達の役目は、あえてリザードマン達に襲われる事、下手に反撃して手足を取られたり、頭を嚙み砕かれないようにする。
このまま、自分達を身をエサにすることで、自分達を捕食しようとするリザードマン達を、ベルガ達が討つ。
言葉で言うのは簡単だが、ベルガ達がもたつけば、その分だけ鎧は壊され、最後には剥き出しの体を飢えた魔龍に、その身を差し出す事になる。
サンダーウェーブを放つのは、魔龍の動きを鈍くし、噛む力を弱める為だが、
マナを蓄えている魔龍には、大した期待を持つことは出来ない。
「来い!!」
迫りくる魔龍に、ビレー達、重装隊は覚悟を決め、息子を信じて身を差し出そうとした時であった。
『バチンッ!!バチッ!!バチッバチッバチッバチッバチッバチッバチッ!!!!!!』
自分の後ろから、サンダーウェーブでは決して聞いたことの無い、雷が弾ける音が耳を鳴らす。
(まさか……)
それが、なんなのかは予想出来た。
なぜなら、自分がここにいるからだ。
本当なら、とうの昔に戦場で、死んで朽ちていたはずなのに、自分は永らえている。
その理由は、リーフが必死になって守り抜いた彼だ。
確かに、目の前には我々オークよりも恐ろしい魔龍がいる……しかし、
(そうだ……我々には……彼がいる)
その時、ビレーは目の迫る飢えた魔龍から目を離して、後ろを見てしまう。
戦場で、しかも目の前に迫る敵がいるのに、視線を切るというのは自殺行為であるのだが、それでも後ろを振り返ってしまったのは、
「我々には…英雄、アフレクションネクロマンサー様が付いている」
自分達の後ろで護ってくれる、伝説の英雄を見たかったからだ。
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