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「二月(ふたつき)様……」
みんなの間を割って出た老人は礼人の側に座ると手を出し、
「礼人、焦ることは何もない。霊力というのは体力と一緒で、子供の時には成長して大人になって安定し、老いれば衰えるもの」
礼人に話しかけながら、無造作に出した手の中には一匹の白銀に光る蝶が止まっている。
「けれど、年を取ることは熟練していくこと。目を閉じて精神を統一して、霊力を球体に安定させてから折り紙にして形を折る……そんなことをしなくてもこんな風に出来るようになる」
白銀の蝶は二月の手の中からひらひらと飛び立つと、そのまま桐箱の上の的に辿り着き、白銀の蝶はまるで本物の蝶のように的の上で羽休みをしている。
「さすが二月様だ」
「お見事なお手前です」
その生きているかのような白銀の蝶を見た周りの者達は感嘆して二月を称えていたのだが、
「そうですよ礼人。今は霊力が育つ時期で今は霊力を磨く時……鍛錬を怠らなければアナタもおじいさんのように立派な霊能者になれますよ」
突然、小さな銀の矢が的を射抜いた。
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