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この力を過信してはいけない事をリーフに伝えたかったのだが、
「はい、気を付けます!!」
(……そうだよな。言われて分かるようなら、自分だって苦労はしなかったんだ)
結局、他人が舐めた苦渋は、どれだけ伝えられても想像しか出来ない。
その味を噛みしめなければ、経験にして身に付けられない……
(分かっていても、どうしようも出来ないのか……)
ならば、リーフも経験すれば良いという話にならないのは、
「もう…戦争が始まるの……」
「大丈夫。無事に帰れるし、この街だってほんの少しだけ苦しい思いをするかもしれないけど、すぐ普段の生活が戻ってくるさ」
リーフの経験の糧になるのは、この街で生きている人達。
礼人は、何かを失って強くなる経験をリーフにして貰いたくないと思うのに、
(大切な何かを失う事が、英雄になる条件なのか……)
自分の世界の神も、こっちの世界の神も非情だと嘆きたくなるが、
「こちらが鍛冶場です」
嘆いた所で神は微笑んでくれないし、何かを施してくれもしない。
________
リーフに案内されて辿り着いた鍛冶場、そこでは暗い夜を嫌うかのように部屋の中が炎で赤く照らされている。
炎の熱が熱く、炎が部屋の中に酸素を吸って息苦しいが、
「姫様ではないですか。このような熱い所へ、どうなさいました?」
そこではドワーフ達が、せっせと鋼鉄を溶かしていた。
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