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「よろしくお願い致します」
礼人はこの鍛冶場で出来る事は、何も無い。
溶鉱炉から漏れ出る熱から耐えながら鉄を溶かし、鉄を打ちながら舞い上がる火の粉に耐えて剣に整えていく程の熟練を持っていない。
「任せおいて下さい。これが我々ドワーフの戦場ですから」
礼人の一礼に親方も一礼して返し、
「溶鉱炉を一つ空けろ!!アソリティの剣を作るぞ!!」
「姫の剣を直すんじゃなくて、一から作るんですか!?」
「そうだ、二本だ!!」
「二本もですか!?」
「ワシはアソリティの剣の製作しておるから、お前達だけで回せる事は回すんだぞ!!」
親方は口早にすることを伝えながら、熱が滞留する溶鉱炉の方へと行くのであった。
赤く染め上げようとする炎の光と、闇に包もうとする夜の暗闇が入り混じる鍛冶場を静かに見つめる礼人に、
「そんなに鍛冶場が珍しいですか?」
お願い事をして、やる事が無いのだからそのまま帰るのかと思ったが、静かに見学する礼人に声を掛けると、
「リーフさん……みんなで生き残るためにって、話を覚えていますか……」
「あの時の話ですよね……もちろんです」
自分が、前線部隊の指揮を執らなくてはいけないという時に、アフレクションネクロマンサー様が話してくれた事……あの時の話を忘れるつもりはないし、これからもずっと覚えている。
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